2014年5月3日土曜日

01. ギリシャ語 ω動詞の現在直説法能動相の変化

〈はじめに〉

 当サイトをご訪問いただきありがとうございます。このブログは古典ギリシャ語・ラテン語の文法事項や単語を初学者が効率的に覚える方法はないかと考えた末に、私が考案した語呂合わせを紹介しています。
  語呂合わせで覚えるという方法は、言語学的にほぼ関係のない日本語と古典ギリシャ語・ラテン語を無理矢理結びつけるという点で、必ずしも推奨されるべき学習法とは言えないかもしれません。しかし、いずれは語呂合わせを捨て去ることを前提にすれば、学習の始めに限っては語呂合わせを有効活用することは有益であると考えています。最初は語呂合わせに頼っていても、そのうち頼らずとも読めるようになり、いずれは語呂合わせ自体を忘れてギリシャ語・ラテン語が読解可能になることが当ブログの最終的な目標です。
 古典ギリシャ語・ラテン語の独習者の方は勿論のこと、特に大学の授業等でギリシャ語・ラテン語を履修されている初学者の方の参考として活用して頂くことを想定しています。また、練習問題の解答は試訳であり、間違いがないことを保障するものではないことをご了承ください。
 また、当ブログの古典ギリシャ語・ラテン語関連の一連の投稿は、それぞれ『ギリシア語入門 改訂版』 『新ラテン文法』の構成に沿っています。ただし『ギリシャ語入門 改訂版』『新ラテン語文法』の内容をそのまま載せているわけではなく、最も基本的な文法事項を覚えるための効果的な語呂合わせを中心に紹介しています。 当ブログで扱いきれていない詳しい文法事項については、『ギリシア語入門 改訂版』 『新ラテン文法』等の古典ギリシャ語・ラテン語の基本書を参照して下さい。

ω動詞の現在直説法能動相の変化

・ギリシャ語の動詞は ω動詞(オー動詞)と μἰ動詞(ミー動詞)に分けられ、90%以上が前者
・ギリシャ語の動詞には英語のように単数形複数形がある(他に双数形があるが、これは稀)
・まずは ω動詞(オー動詞)を扱う
・以下はω動詞の現在直説法能動相の変化である

〈変化表〉
現在直説法能動相(ω動詞)
一人称単数 παιδεύω パイデウオー
二人称単数 παιδεύεις パイデウエイス
三人称単数 παιδεύει パイデウエイ
一人称複数 παιδεύομεν パイデウオメン
二人称複数 παιδεύετε パイデウエテ
三人称複数 παιδεύουσι[ν] パイデウウシ(ン)

※ パイデウオーπαιδεύωは、「(私は)教育する」という意味
これを由来とする語としては、英語の pedagogy、ドイツ語の Pädagogik、 フランス語の pédagogie 等がある(いずれも「教育学」という意味)
語幹はπαιδεύ(パイデウ)


〈語呂合わせ〉
変化する箇所(太字)だけを繋げると、
 
オー/エイス/エイ//オメン/エテ/ウシ(ン)
となる
「おー(今年の)エース(は魚の)エイ」
「お面、得て、牛」
と覚える

単数形は、なぜか今年のチームのエースが魚のエイになってしまって、その発表を聞いて謎の感嘆(「おー」)が漏れているイメージ。


複数形は、人がお面をかぶって獅子舞になるイメージ。

一つ目の語呂合わせ。こんな感じでどうでしょうか?笑


〈ポイント〉
オー」が語尾ならば、その動詞の主語は「私」。
エイス」が語尾なら、その動詞の主語は「あなた」。
エイ」が語尾なら、主語は「彼」や「彼女」や「あの人」や「ジョン」。
 
オメン」なら「私たち」、
エテ」なら「あなたたち」、
「ウシ(ン)」なら「彼ら」。
」から始めるのは、どちらも一人称である。
エテ」はあまり出ない(あなたたち、と語りかける場面は日常的にはあまり存在しないため)。
 
すると「エ」から始まるのは主に「エイス」か「エイ」であり、短い方(エイ)が来たら三人称単数、と覚えればよい。
「ウシ」はよく出るが、これは牛がそこら中にたくさん居るイメージで、「彼らは牛」と覚える。

ーー

練習問題


〈単語〉
γράφω グラフォー 書く 英語のgraph

ἔχω エコー 持っている、(或る状態で)ある
 
κακῶς カコース 悪い ※「かこー(過去)」はいつも「悪い」
 
καλῶς カロース 良い ※「かろ」うじて「良い」
 
κελεύω ケレウオー 命令する ※「蹴れ!魚(う)を...」と「命令する」
 
κλείω クレイオー 閉じる
 英語のcloseに似ている?
 
λέγω レゴー 言う 「ロゴス」(言葉、理性などの意味)は名詞形
 
οὐ ウ 英語の not 頻出!

οὐ 〜, ἀλλἀ 〜 ウ…, アッラ… 英語のいわゆる not A, but B
 
οὐ μόνον 〜, ἀλλἀ καί 〜 ウ モノン…, アッラ カイ… 英語のいわゆる not only A, but also B 俺「だけ」の「もの」、そう思ったら「あっらー」(but)、違った
 
πιστεύω ピステウオー 信じる 
 英語のpious(信心深い)に似ている?
 
πῶς ポース いかに 英語の how 「どうやって一瞬で坊主(ぽーす)になったんだ?」
 
τήν θύραν テーン テュラン ドアを テーンは定冠詞
 
τί ティ なぜ 英語の why 「ちっ(なぜだ…)」
 
φεύγω フェウゴー 逃げる
 英語のrefugee(避難民)に似ている?


〈問題〉
1. γράφεις. 
あなたは書く。
語尾変化が「エ」の音から始まっていて、長いので、二人称単数

2. κελεύομεν. 
われわれは命令する。
「オ」から始まるのは一人称。
「オメン」は複数。(「オー」が単数)

3. πιστεύετον.
二人は信じる。
※これはこのページでは扱っていない「双数形」

4. φεύγουσι;
彼らは逃げるのか?
「;」の記号は疑問形の「?」を意味する。
「ウシ」で終わるのは三人称複数しかない。

5. κλείετε τήν θύπαν. 
あなた達はドアを閉める。
「エテ」は珍しい。

6. τι φεύγετε;
なぜあなた達は逃げるのか?
再び「エテ」。

7. οὐ λεγο, ἀλλά γράφω.
は言うのではなく、書く。
「オー」は一人称単数

8. πως ἔχει;
彼/彼女(の状態)はどうですか?
「エイ」は三人称単数
英語に直訳すると how he/she has (it)?

9. οὐ καλῶς ἔχει, ἀλλά κακῶς.
彼/彼女(の状態)は良くなく、悪い。
英語に直訳すると he/she has not good, but bad.

10. οὐ μόνον λέγει, ἀλλά καί πιστεὐει.
は語るだけではなく、信じてもいる。